WSJ-コムキャスト、ディズニー買収案を撤回

ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米ケーブルテレビ(CATV)最大手のコムキャスト(Nasdaq:CMCSA)は28日、米娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニー(NYSE:DIS)に提示していた買収提案を撤回すると発表した。業績低迷でディズニーのマイケル・アイズナー最高経営責任者(CEO)に対し辞任を求める声が強まっていたことから、コムキャストは好機と判断し、2月11日に買収案を発表した。しかし、ディズニー取締役会に拒否され、株主も強く反発。結果的に自社の株主およびディズニー取締役会の考え方を大きく読み違えた。

提案発表後にコムキャスト株は大きく下落したが、買収案が撤回されるとの観測でこのところは回復していた。それでも2月11日の発表前の水準を11%下回っている。コムキャストの28日終値は前日比21セント(0.73%)高の29.06ドル。ディズニーは同23セント(0.95%)安の23.95ドル。

コムキャストが28日発表した1−3月期決算は好調な内容だった。買収案撤回と好決算にもかかわらず、コムキャスト株が小幅な値上がりにとどまったことについて、サンフォード・バーンスティーンのアナリスト、クレイグ・モフェット氏は意外だったと指摘。「ダメージが残っているようだ。買収を目指したことによる影響を引きずりそうだ」と述べた。

コムキャストは、ディズニー買収断念を1−3月期決算と10億ドル規模の自社株買いと同時に発表した。投資家の信頼を回復するため、コムキャストが買収案を撤回してから、積極的な自社株買いプログラムを打ち出すとの観測はあった。

コムキャストが発表した1−3月期決算は、純損益が6500万ドルの黒字(前年同期は2億9700万ドルの赤字)、1株損益は3セントの黒字(同13セントの赤字)となった。CATV事業の売上高は前年同期比9.8%増の46億5000万ドルだった。

コムキャストの幹部らは、ディズニーを買収できなくても、高速インターネット、ビデオオンデマンド(VOD)、高精細度テレビなどの新サービスを導入することにより、強い成長が見込めると強調した。また、インターネットを使った電話サービスを計画していることも明らかにした。このサービスは、ビデオ電話など、電話会社ではまだ提供されていない機能を持つことが特徴という。

しかし、ディズニー買収の失敗は、メディア業界のディールメーカーとしてのブライアン・ロバーツCEOの名声を傷つける結果となった。コムキャストの提案は、ディズニー株1株をコムキャスト株0.78株と交換するというものだったが、1株2.38ドルのプレミアムは発表後すぐに消えた。コムキャスト株主の不満で株価が大きく下げたためで、このことがディズニー取締役会に提案を拒否する根拠を与えた。提案が撤回される直前、コムキャスト案の価値が1株23.77ドルだったのに対し、ディズニー株は24.18ドルだった。

買収条件を引き上げれば、自社株の下落をさらに招き、再び条件引き上げを余儀なくされるような状況を作り出し、コムキャストは窮地に追い込まれた。自社の株主の考え方の読み違えたためだ。

またコムキャストは、ディズニーの主宰取締役で、3月に会長に就任したジョージ・ミッチェル氏と、コムキャストの仲介人との間で水面下で交わされた対話を誤って解釈した。コムキャスト幹部らは、この対話の内容について、買収を提案すれば一部のディズニー取締役は前向きに検討するシグナルであると考えた。しかし結果的には、そうしたシグナルは実際には送られなかったか、あるいはディズニー取締役らの気が変わったかだ。

ディズニー買収を目指していたため、コムキャストは他の買収ターゲットを狙うことができない状況にあったが、そうした足かせは取れた。ターゲットとみられる会社のひとつは、経営破たんしたCATV業界5位のアデルフィア・コミュニケーションズ(ADELQ)。アデルフィアの取締役会は先週、身売りを検討することを決めており、他のCATV大手が買収に乗り出すとみられている。コムキャストのロバーツCEOは28日の電話会見で、アデルフィア買収を検討すると述べた。
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